服部栄養専門学校校長・医学博士
服部幸應さん



東京代々木にある服部栄養専門学校は例年入学希望者が殺到する
ことで有名です。服部幸應さんはその校長先生。

「必ず1日に1回は、一汁一菜をつくる。これを実行していただきたい」
服部先生は、学園の生徒や若い世代に向けてこう言います。

「一汁三菜や毎食手づくりなんてむりなことは言いません。家事に時間を
かけられないのは時代の流れです。だから1日1回でいいです。
一汁一菜をつくる。そのことが習慣になれば、時間に余裕があるときは三菜
でも五菜でもつくれるものです。朝食や夕食時につくっていただければいい」

何気なく「朝食に手づくりを」と勧めているようでいて、実は、朝食抜きでは、
子どもや若者は午前10時くらいにエネルギー切れ
になってしまうから、ぜひきちんと朝食を食べてほしいという深い理由があります。

服部さんのお宅は代々続く料理家で、生まれたときから服部学園を率いることが
決まっていたようなものでした。
学校を興隆に導いたお母さんの急逝で、若くして学園を受け継いだ服部さんは、学園
経営のかたわら、料理の世界から食の問題へと活躍の範囲を広げていきました。

若き学園長が、一足飛びに現在の地歩を築いたわけではありません。服部さんは、栄養や食生活の改善について発言するためには、
料理家としてだけでは力が足りないと考えました。そして医学を学び、医学博士号を取得しました。恵まれた環境に安住しない、大変な
努力家なのです。

1998 年には食育のすすめ」(マガジンハウス)を著して、食べることは教育に不可欠の一要素である、予どもたちには、適切な食べ物
をきちんと食べさせることこそが心身の健康をもたらすものであると立論し、多くの人の共感を呼びました。

以来、服部さんは食育推進のために精力的に活動を始めました。厚生労働省、農林水産省、文部科学ほかさまざまな公的機関の委員
を務めて、食育普及を推進しています。その活動が実を結んで、食育基本法案が国会に提出され、食育を知育、徳育、体育とともに重要
な教育の基本のひとつと認め、内閣府に食育推進会議を、地方には食育推進都道府県民会議や食育推進市町村民会議を置く条例を定
める方向で衆議院の委員会で審議中です。服部さんも参考人の立場から発言してきました。

一方で、幼い頃から一流の味を仕込まれた服部さんの優れた味覚と調理の知識が、テレビの世界でも花ひらきました。
料理番組に一ジャンルを拓いた「料理の鉄人」に企画参加したことは有名です。最近では、「魂のワンスプーン」でも、視聴者を納得させる
ジャッジが評判でした。

最後に高齢者の食生活にアドバイスをいただきました。「植物性の高たんばく食がいいのですが、肉を食べたっていいんですよ。
ただし、野菜もたっぷり食べましょう。しっかり食べて、頭や体を使いましょう。考えがまとまるだけでも達成感があります。考えるのがめん
どうくさいと思うようになったら、それは危険信号ですよ」








No.62 (2005年6月号)
料理の鉄人や魂のワンスプーンなどの数々のテレビ番組
で同じみの服部幸應さんは(学)服部学園服部栄養専門
学校の理事長・校長であり、ベストセラー「食育のすすめ」
の著者。失われていく日本人の食文化を愛し「食育」で
子供たちを守ろうと大車輪で活躍中です。
しっかり食べて、頭や体を使いましょう。