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ほほえみだより

 



  〜 No.60  (2005年2月号)

役づくりはさらりと流せないけれど私生活は凝りません

 
俳優
三國連太郎 さん

徴兵されて行った中国で終戦を迎え、復員後、1950年に松竹大船の研究生になった三國連太郎さん。翌51年に木下恵介監督作品で主役デビューを果たし、以来、個性の強い演技派として数々の名作に出演してきました。著書も数多く、その高い見識はよく知られています。

つばのある黒い帽子を被って都内のホテルに現れた三國連太郎さんは、住まいが静岡県沼津市にあります。ふだんは山の麓のご自宅で、山に入って散策するのを日課のようにして暮らしていらっしゃるとか。
結婚する時に「ぼくの仕事のことには口を差し挟まないでください」と頼み、それ以外は何でも奥様の好みにする、と決めたそうです。でも、実はそこには大変な気配りが隠されているようです。たとえば東京へ仕事に行く日の朝、奥様が大変そうな様子だったら、三國さんは「今はほしくないから、撮影所で食べる」と言ってそのまま出かけてしまうそうです。 「ウソをついていると言えばそうなんですが、それは共同生活の基本じゃないかと思うんですよ。
夫婦ふたりですから自分のことは自分でやらないと」この頃そういう気持ちが欠けている老人が多いのではないかと、三國さんは言います。老人が甘やかされ過ぎているのは、不健全な社会の姿だ、と。「今の自分にできることでいいから、自分でやろうとする意志を強く持たなくちゃいけないでしょう」
健康法は特になく、食べものも何でも食べる。ただ「いやなことはいやだと断る」。そしていやだと思うことは、長く記憶にとどまらないように工夫するのだそうです。
昨年、三國さんはテレビの2時間半ドラマ『新幹線をつくった男たち』(テレビ東京)で、十河信二国鉄総裁役を演じました。生前の十河さんの人柄をよく知っていた三國さんには、脚本に描かれた十河像の一部に納得できないものがありました。 「自分の役づくりと矛盾するセリフを言わなくてはならないのは、たいへん苦痛です。そういうときはセリフを心に刻み込まないように、カンニングペーパーを使って切り抜けます」いやなことでも耐えるべきと思えば黙って耐える協調性は、奥様につく小さなウソと一脈通じるものがあるようです。
毎年製作される人気映画シリーズ『釣りバカ日誌』のスーさん役については「至ってまじめにやっています」。喜劇的要素にこそ人生のドラマが潜んでいるのです、という静かな口調に、演技について思索してこられた長い時間が感じられます。
「今の人の芝居のリズム感とぼくらの時代のものはだいぶ違うようで、息子に、おやじ、時代錯誤じゃないかと言われました」
息子とは言わずと知れた俳優の佐藤浩市さん。ふだんは照れくさくて演技論などはしないそうですが、先日、お孫さんにこと寄せて、こんな言葉を送ったそうです。花咲きて蝶来たり花散りて蝶去りぬ「これは、僕自身の生きざまです。息子にも孫にもむりをせず、生きていってほしい」年齢を訊かれるのは好きじゃないけれど、年齢を意識しないわけではなく、条件反射が遅くなってきているから、夜間に車を運転するのはもう止めたとのこと。
目標にしている怏f画200本出演揩ノ、残り20本余り。ますます精彩を放つ演技を見せてもらうのが楽しみです。