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ほほえみだより

 

  〜 No.56

いくつになっても、訓練してできるようになるのはうれしい

  作家 畑正憲 さん

「ムツゴロウの動物王国」の主で、ライオンと抱き合ってうれしそうに笑う人。畑正憲さんといえばあの 笑顔です。大変な学識と恐るべき行動力で私たちを魅了し続けてきた畑さんは、今度は動物王国の東京・あきる野市移転計画で驚かせてくれました。人生の辛酸をものともせず、少年のような畑さんから元気をいただきましょう。

「ちらかしてて……。アハッ、ひどいもんでしょ」
畑正憲さんにお会いしたのは東京・青山のマンション。たった今まで絵を描いていらしたようです。「時々は少しきれいにするんですけどね。ごめんなさい」とやさしく丁寧におっしゃりながら、席を勧めてくださいました。そして開口一番意外な言 葉。
「私もいつの間にか高齢者です。年をとったなあと思います。」れだけは勝てないですからね。特に身体能力、記憶力。非常に衰えを感じます」
畑さんは胃がんの手術をなさっています。それ以来、一度にたくさん食べるのが難しくなりました。お腹がいっぱいになり過ぎて苦しくなった時は、どんな場所でもごろりと横になるそうです。やっぱり畑さんは並みの人とは違います。その証拠に自分では少年のような気でいて、パスの中で思わず席を譲ってしまって、アレ、自分も年寄りなんだっけと赤面することがあります」ともおっしゃいます。  ″ふつうの年寄り″はどういうふうに老いと向き合ったらいいでしょうかと伺ったら、「年寄りにとって一番大切なことはいたみを正直に受け止めることです」と即座に。年をとるとあちこち痛くなってくるけれど、痛いものなんだと受け止めて、痛みをひとつひとつ克服していくしかないそう です。
「私も関節が痛いので、立ち上がる時は、こうやってひざに手を当てるようになりました」
と立ち上がると、いきなり勢いよくひざを上げる運動を開始。痛くても鍛えるのだそうです。「だって脚が上がらないと馬に乗れ ないでしょ」とまたにっこり。どうも超人すぎて、健康法としては参考になりそうもありませんが、その精神の柔軟さは、ぜひ見習いたいこと。痛い、苦しいと不平に思っているばかりではつらいだけ。痛さや苦しさを受け入れながら、自分のやりたいことをやれるように努力するということのようです。
「他の生物がまわりにいない生活はあり得ない。人間だけで住むなんて不可能だし、そういう社会は崩壊します。細菌も病原菌も、そして免疫もあり。他の生物は、人類が生きていくための絶対条件です」という畑さん。
「日本人の家は、本来光、風、草木とマッチする、自然と同居する家です」とも。 「動物と人間は同じ空間で暮らしながら一緒にやっていきましょう」というメッセージを送り続けてきた畑さんは、最近、マンションでも犬が飼えるようになってきたことも歓迎してい ます。「アニマルセラピーなんてわざとらしいことをせずに、いつも犬のいる生活、子どもがいる暮らしに、老人も一緒にいる。 このはうがずっといいでしょう。それが命がつながりあう大切さです」とサラリと。そこには「犬を栄養剤に使うな、セラピー なんかさせるな」という批判も込められています。今から9年前、60歳になった時に、ブラジル紀行の取材のためにポルトガル語を始めたところ、記憶力が衰えていてなかなか勉強がはかどらなかったそうです。
「でもネ、3年経ったらスラスラできるように。生きていることがうれしくなりました」
今日もはつらつと仕事に向かわれる畑さんです。