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ほほえみだより

 

  〜 No.54

世の中への恩返しに科学が好きな子どもが育つ環境づくり

  東京大学名誉教授 小柴昌俊先生

2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊先生が、『ほほえみだより』の読者のためにインタビュー に応じてくださいました。偉大な研究者である先生は、含も高い目標を立てて前進を続けておられますが、また毎日を楽しく過ごす達人でもあるようです。

これまで数々の賞に輝いていらっしゃいましたが、ノーベル賞を受賞なさって一層お忙し くなられたのでしょうね。
受賞の発表があってから人生を変えられちゃったねえ。今は自分の時間なんてないの。大学の広報室の人が、いろんな依頼を整理してスケジュールを組んでくれるから、その通り動いている。ぼくは基礎科学の分野をずっとやってきたでしょう。基 礎科学っていうのはすぐには役立たない学問だから、研究成果を利益として国や社会にお返しできるものじゃない。だから税金を使って研究をさせていただいたお返しに、時間の都合がつく限りは、みなさんからの依頼はお受けすべきだって気持ちがあるんです。
ノーベル賞受賞以前から世界的な研究者でいらっしやった先生は、ストックホルムの授賞式でも悠々としていらっしゃって、私たち日本人は誇らしい気持ちがしました。
ストックホルムでは王室主催のディナーパーティーがあってね。うちのかみさんは王様にエスコートされていた。ぼくのほうは、すごい美人のスウエーデンの文化大臣の腕を取って席に着いた。そこまではよかったんだけど、ぼくは4年前からリウ マチ性多発筋痛症の持病があってね。疲れやすいから、どんなえらい人の前でもちょいと目をつぶって居眠りしちゃう特技があるわけ。その時も金髪美女を横にして居眠りしていたら、まずいことにスウェーデンのテレビがそれを映しちゃった。あれはちょっと具合が悪かったよね。
リウマチ性多発筋痛症の治療はどのように
ずっとステロイド剤を服用しているけれど、ようやく最近少し量を減らしていて、来週はチベットの漢方薬を使った温泉療法を1週間受けます。ぼくはね、この年になっても「この病気、いずれは治したい」という希望は捨てていないんです。
平和基礎科学財団を興されましたがどのようなことをなさるのですか。
基礎科学の研究というのは、ひとつの研究計画に100億、1000億単位の研究費が必要だから、民間財団が研究を応援するなんてことはとても無理。そこでぼくは別の形を考えました。それはね、財団の基本財産はミニマムの1億だけ。年々の事業費は日本の国民のみなさんに1年に1円ずつ出してもらおう、そうすれば年間1億2000万円の事業費が出る、っていう方法。財団は日本国内に基礎 科学を支えて行く雰囲気を作る役割を果たしたいと思っています。具体的な計画のひとつは、子どもたちに科学の楽しさを教えていくこと。もうひとつは科学の楽しさを教えた先生を表彰すること。そういうことを考えています。
先生は研究生活でもさんざん考え抜いたというエピソードが豊富ですが、財団計画のアイディアは案外身近な発想ですね。  
新しいことを考えつくのは大変だけど、誰かが考えついたことを聞いてみると誰でも考えつきそうなことなんですよ。本気になってやりたいと思うことを、実現にこぎつけるまで、あれこれ考え続ける。どの考えが実を結ぶかわからないから、いろい ろ考えるんです。でもいつもいつも考えているわけじゃありませんよ。いちばんの楽しみは孫娘と一緒にいることですねえ。 ひとりは小学1年、もうひとりは中学3年。孫はぼくのことを世界的権威とは見てくれないし、全然尊敬してくれないなあ。
「夢を大切に」。インタビューの最後に先生が私たちに贈ってくださった言葉です。先生の 優しさが心に響いたひとときでした。