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ほほえみだより

 



  〜 No.51  (2003年8月号)

昔はバリバリに活動してたおかあさん。年をとってもボケちゃっても、尊敬と愛情をもって接してました。

 
舞台女優・ジャズ歌手・イラストレーター
水森亜土さん

イラストレーター、ジャズ歌手、そして舞台女優と、幅広いジャンルでマルチに活躍する水森亜土さん。今回は表紙のイラストも特別寄稿してくださっている亜土さんに、「明るく楽しく前向きな」ご自身の介護体験を語っていただきました。


「家での介護って、ひとりではとてもできないですよ。うちの場合は、40年以上通ってくれているお手伝いさんと義姉と私、3人で協力しあえたからよかったの。仕事が忙しかったのもかえってプラスでした。外で発散しながら自分自身も介護して元気を養わないと辛いから」
お姑さんは、かつては市川房江さんの片腕として活動したバリバリの婦人運動家。痴呆が始まったのは、夫を亡くしたショックと椎間板ヘルニアを患ったことがきっかけでした。痴呆は少しずつ確実に進行し、「庭に栄養をあげましょう」と尿瓶の中身を畳に撒いたり、飼犬を見て「うちの息子も大きくなって」などと言うこともしょっちゅうだったとか。
「でも昔のおかあさんは、すごく寛大でインテリで、すばらしい人だったの。現在のボケた姿だけ見てると介護するほうも気が滅入っちゃう。でも、その人の栄えある過去をちゃんと見ていれば、そんなに暗くならずに向き合えるんですよ」
かつて歩んできた過去の栄光も含めて、お姑さんの人格をきちんと認めてあげること。大変だとばかり思わないで、なるべく明るく楽しい気持ちで相手に接すること。亜土さんはこの2つを心がけて介護を続けたと言います。
私はジャズを歌ってるから、何をする時も音楽がないと乗れないの。オムツを替える時も、『おむつでチャチャチャ』とか歌いながらやっていました」
1日1回は必ず誉め言葉を言うのも亜土さん流の介護法。
「まず会ったら、おかあさん、今日もきれいね、とか話しかけて、クリームをつけてさすりながら爪の手入れをしてあげたり、シャンプーしてあげたり。最初は『バーカ』なんて悪態ついてるんだけど、やっぱり誉められると嬉しそうなのね」
最期の病床でもずっと手を握っていた亜土さんに、お姑さんは小さな声で「ありがとう」と言い残して亡くなりました。
「最後の『ありがとう』っていう言葉にすごく救われました。でもたとえ何も言わなくても、介護される人には、きっと介護する人の心が伝わってるはず」
自らの介護体験を通じて、まず介護する人が元気じゃないとダメ、と実感しているという亜土さん。また、いざという時に救急車を呼んでもらったりすることもあるから、ご近所付き合いも大切と言います。
家族に病気の人やボケている人がいることを、まわりに隠さないことも大事。うちはお客さんが来ていても、おかあさんと一緒にご飯を食べさせて、食事中でも『ちょっと失礼』ってトイレに連れて行ってました」現在も同居している義姉は今80歳。少し痴呆の兆候が見られるようになってきました。「大根の煮付けの作り方なんかも、私はわかっているけど、おねえちゃんにボケてほしくないから、どうやるの? と聞いてあげるんです。そうするとすごく嬉しそうに張り切って教えてくれるんですよ。人間って必ずいいところや特技があるもの。それを見つけてなるべく何かをやってもらうようにすると、自分も楽だし、頼まれたほうも生き生きするんです」
介護する人もされる人も、お互いに敬意と愛情をもってコミュニケーションをつむいでいく亜土さんのお話から、明るくハッピーな介護生活のヒントが見えてきました。